あれから、どれぐらいの月日が経ったんだろう。俺は社会人になって三年目だから、もう三年も経ったのか。早いな。
あいつと会わないようになってから、三年。もう三年、まだ三年。三年経ってようが経ってまいが、俺はまだあいつのことが好きだった。偶然街で会ったそのときは、言ってしまおうと決めていた。好きだったと。いや、今も好きだと。
そう思っていたのに。


「久しぶり、銀ちゃん」


あいつはもう、俺の届かないところにいた。
好きとさえ言えない、言ってはいけない、それほど遠いところに。




あいつは、もう――――




「どう、このドレス、似合ってるかな?」
「あー、うん、似合ってんじゃねーの」
「え、何その言い方ー!もっと褒めてよ」
「それはおめー、旦那に褒めてもらえ」




――――俺の知らないヤツのところにいた。




白いウエディングドレスに身を包む彼女は、とてもきれいだった。今までで一番と言っていいほどに。


なあ、俺はどうすればいいんだ?今まで言えないままずっとため込んでいたこの感情を、どこに吐き出せばいい?今更お前に言ってしまえばいいのか?いや、そんなことをしたってもう遅い。遅いどころか、あいつを困らせることしかできない。




「銀ちゃんにはほんとお世話になったよね。高校生のとき」
「そうだったか?」
「うん、いつも銀ちゃん銀ちゃんってまとわりついて。正直迷惑だったでしょ?」
「いや、別に。そうでもねーけど」
「ほんとに?良かった。 今だから言えるけど、私ね。あのとき、銀ちゃんのこと好きだったんだよ?」


なあ、俺はどうすればいい?


そんなことを今更言う必要あったのか?そう言われて、俺はなんて答えればいい?俺も好きだった。そう言えばいいのか?




「あーそうなの。ま、昔のことはもうどうだっていいだろ(そんなの、嘘だ)」
「まあ、昔のことだけどさ。もう銀ちゃんに会えないかもしれないから、今言っておこうと思って」
「あっそ。もういいから、旦那のとこ行ってこいよ(違う、行くな)」
「うん、じゃあ行ってくるね!」
「おう。(好きなんだよ、)」
「じゃあね、銀ちゃん!」
「じゃあな(行くな、行くな、行くな、)」




待ってくれよ。俺だけ置いていくなよ。


俺はあのときから。三年前から一つも変わっていない。
まだずっと、お前のことが好きなままなのに。
それなのにお前は、俺を一人置いて行っちまうのか?


なあ、待ってくれよ。
俺のこと、置いていくなよ。




―――好きなんだよ。




彼女の背中が、だんだんと遠くなっていく。すぐに近づいて手を伸ばせば、届く距離なのに。だけど、彼女の背中は、遠くて。
どんなに手を伸ばしても、届かなくて。


俺は、どうすればいいのかわからずに、そこに立ちつくしたまま動けなかった。






遠い背中
もしも、俺があのとき、好きだと伝えていれば。
あいつは今、どこで、誰と一緒にいたんだろうか。