坂田君は、私の隣の席に座っている男の子であり、私の好きな人だ。 男の子と喋るときは本当に楽しそうなんだけど、なぜか女の子と喋るときはぶっきらぼうだ。…私は喋ったことないけど(こわいから)。坂田君はどうやら女の子を嫌っているらしい。 なんでも、昔付き合ってた女の子に浮気されて以来、女の子を毛嫌いしてるとか。そういう噂を聞いたことがある。ほんとのことかわからないけど。 私的には嘘であって欲しいと思う。あ、坂田君が女嫌い、じゃなくて、昔付き合っていた女の子がいるって方ね。まあ坂田君は格好いいし、男の子に優しくしているところを見たことがあるので性格もいいと思うから、女の子と付き合ったことがない方がおかしいのかもしれない。っていうかその方がおかしいかも。 でも認めたくないのが事実。だから私は現実から目を反らしている。 うん、あの噂はうそうそ。女嫌いは置いといて。 にしても。 隣の席になってラッキーとか思ってたけど、隣って逆に見にくいな。顔を横に向けないと見れない。しかも坂田君に、私が坂田君を見ていることが気づかれやすいし。困ったなあ。 なんて考えながら廊下を歩く。最近はずっと坂田君のことばかり考えてる。私って、そんなに坂田君のことが好きなんだ。なんでだろう。 坂田君が男の子にしてあげてることのひとつひとつが、私の好きなことばかりだった。たとえば、お弁当を忘れた男の子にちょっとだけおかずを分けてあげてるところとか。ああ、私も欲しいな、と思う。 あとは、ちょっと可愛めな男の子が、何かにつまづいて頭から坂田君の胸に飛び込んじゃったときに、「何やってんだよ、大丈夫か?」って言って頭をなでてあげてるところとか。見てて男の子がうらやましくなる。 でも、それが女の子だったら。果たして坂田君は同じことをしてあげたんだろうか。 うーん…多分、してあげないだろうなあ。 「いやまあ、なんていうか。色んな意味でしてほしくないけど」 なんて思いながら、廊下を歩いていると。 「わっ!」 間抜けなことに、私は何かにつまづいて体制を崩してしまった。 一体廊下に落ちている何につまづけば、体制を崩すことができるのだろう。のんきなことに、私はそう思っていた。 ふわり、という表現が一番正しいんだろうか。私は廊下に頭から突っ込んでこけることはなかった。目の前には、男子の制服の胸ポケット。誰かが私を助けてくれたんだ、と思うと同時に、やってしまった、とも思った。まだ女の子なら良かったのに。よりによって、男の子なんて。 「ごめんなさ…」 よりによって。 ―――――坂田君なんて。 坂田君はびっくりした顔で私を見ていた。ああ、怒られる。そう確信していた。 「ごめんなさい!えとえと、ぼーっとしてたら…その…」 「何やってんだよ、大丈夫か?」 ―――その声は、とても優しかった。私が思っていた声とは、全然違っている。 あれ?怒ってない? 「馬鹿だなー。っていうか俺ってアレ?人に転んで抱きつかれる体質なの?前にもあったんだけど」 坂田君は、笑っていた。やさしい顔で。いつもクラスの男の子とかに、見せるあの顔。 「え…?」 「…? なに、俺の顔になんか付いてる?」 「あ、ううん。何にもないけど…」 「じゃ何?」 いつも横からしか見えなかったから、ちゃんと知らなかったけど…… 「坂田君て…そんな風に笑うんだね」 ふわり、と笑うきみ。 そういうと、坂田君はなぜか顔を赤くした。 後でわかったことだけど、坂田君は女の子が嫌いなんじゃなくて、苦手なだけらしい。 (どう接したらいいかわからないから、って、赤い顔をして言った彼を、とても可愛く思ったのは秘密。) |