本当に、ただなんとなくだった。
新八と神楽がどうしても花火大会に行きたいって言って聞かねーから、まあ屋台(主に甘い食い物を売ってる店)に興味があった俺は着いていってやることにした。(一応、だ。なんかあったらアレだしな) 神楽はたこ焼きやら綿あめやらを嬉しそうに買って食っていた。(金は俺が出してやった。そして綿あめは俺も買った)神楽は花火より屋台だったが、新八はそうでもないらしく、しきりに夜空に打ち上げられる花火を嬉しそうに見ていた。そんな新八を見た神楽も、同じように空を見上げる。 二人のその嬉しそうな顔が、どうしてもあいつのあの時の顔に似ていて、俺は視線をそらした。何年前だったか、それさえも曖昧だった。なんせ攘夷戦争より前の話だ、覚えてないのも無理ねーか。あいつに、花火大会行こうって誘われて、仕方なく行って、そんで… そうやって俺が昔の思い出に浸っている時、神楽のバカでかい声が俺の耳に響いた。 「銀ちゃんも見るネ!めっさ綺麗アル」 んなことわーってるよ、なんせあいつも同じ事を俺に言ったからな。 「銀時見てよ、花火綺麗だよ」ってあいつは言った。そんで俺が、んなことわーってるよって言ったら怒って、 「わかってるんならちゃんと見なさい」 そうだ、この台詞だ。これとまったく同じ台詞をあの日あいつに言われ――――― 「…え?」 その声は明らかに神楽のものではない。間違いなくあいつの、の声だった。あの日、あの時と変わらない台詞が、一言一句間違わずにすぐそばから聞こえてきた。驚いて俺が顔を上げると、そこには、 がいた。 「久しぶりだね、銀時」 懐かしい。昔、攘夷戦争に行くまでは毎日のように聞いていた、あの澄んだ声。なんでこんなに懐かしいんだ、なんでこんなにもまだ、 「元気だった?」 こいつが、愛しいのだろう。 まったく、俺らしくもねーな。一人の女が未だに好きだったなんて。自分でもびっくりだ。俺はまだが好きだった。忘れたつもりでいた、けどそれは“つもり”だったんだ。 俺は頭を掻いたあと、あいつに近づく。新八と神楽は花火に夢中で、空を見ながらきゃっきゃと騒いでいる。は近づく俺を見て、あの日と変わらない笑みで俺を見つめる。 懐かしい、 「あー、えーっとだな。なんつーか、久しぶりだな」 「あれ?なんか銀時らしくないね、その喋り方。もしや緊張してる?」 「してねーよ」 「してる」 にんまり笑うが少しばかり憎らしくなり、俺はふいと目を逸らした。照れてるわけでもねーのに、照れてるの?と言われてかなりむかついた。 ……、まあ、いいか。 こんな他愛もない会話さえ、今の俺にとっては懐かしくてたまらないものなのだ。 「あの、さ。」 俺が口を開くと、はなに?と答える。 …そうだ、あの日。一緒に花火大会に行ったあの日も、確か、こんな風に話した。 『あの、さ。俺、明日から攘夷行っちまうだろ?だから、その前にお前に言っておきてーことあるんだけど』 『なに?』 あの日、言えなかった言葉。 今なら、言える、そんな気がした。 「、 ――――好きだ」 夏と、花火と、君と。 (そう言ってきつく抱きしめると、あいつは何も答えずにただ笑った) 07/08/04 |