――――久しぶりに万事屋の隅々まで掃除をしていると、ひらり、と一枚の写真が床に落ちた。それは、あいつと撮った最後の写真だった。かなり色褪せていた。は笑顔でピースをしていて、俺はその隣で小さく笑っていた。この写真を撮った数日後、俺はと別れた。突然のことだった。


『銀ちゃん以外に、好きな人ができたの』


そう言われた瞬間、目の前が真っ暗になった。
うそだろ?なあ、そんなのうそだよな?だっておまえ、昨日まで俺のこと好きだって言ってたじゃねーか、なあ、
必死にの肩を掴んで激しく揺する。は悲しそうに目をそらして、ごめん、と一言だけ言った。俺が何を言っても、ごめん、としか、言わなかった。





が万事屋を出て行ったあと、俺はしばらく呆然としていた。ソファに座って、ただただぼんやりとどこか一点を見つめていた。
が、いなくなった。






との想い出は、楽しいことばかりだった。楽しいことばかりだったのは今でも覚えている。でも、何があったのか、何が楽しかったのか、もう思い出せない。
そう、あの写真を撮った日、俺はと遊園地に行ったんだっけ。そんで、すげー数のアトラクション乗って、帰るときあいつが、写真撮ろうって言って、そんで、




『銀ちゃん、    』




あいつが何か言ったんだ。でも俺は、聞こえていないふりをした。わかっていたんだ、薄々感づいていた。は多分、もうすぐ俺から離れていってしまうことを。でも俺は、そのの決定的な科白を、聞こえていないふりをしていたんだ。少しでも、別れを先延ばしにするために。
そしてこの写真に映っているの笑顔も、本当の笑顔なんかじゃない。この笑顔の裏にはきっと、いつ別れを切り出そうかという悩みをずっと抱え込んでいたんだろう。




『銀ちゃん、    』


あいつは、なんて言ったんだっけ。それさえももう思い出せない。








あの日までの俺は、想い出は色褪せないと思っていた。思い込んでいた。写真は色褪せたとしても、記憶は色褪せないと。と過ごした記憶は、きっと忘れないと。






でも、今ではもう、色褪せて何も思い出せやしない。
の本当の笑顔さえも。








いろあせて、色褪せて、

 ( や が て 、 消 え る 。 )






『銀ちゃん、
ごめんね。


そう、確かにあいつはそう言った。 ただ、淋しそうに。