蝉の、声がした。 昨日までは、聞こえなかった蝉の声。私は、ああ、夏が来たんだな、と思った。私は、夏が好きじゃない。夏なんか嫌いだ。大嫌いだ。 夏が来ると、どうしても。どうしても、銀ちゃんのことを思い出してしまうから。 「暑ィなーオイ。やっぱクーラー買うべきだなー、って金ねーんだよなー」 「銀ちゃん、一人で何言ってんの?」 「いや、クーラー買いたいけど金ねーんだよなーって話。」 「あそ」 「あれ?なんか冷たくね?」 「別に」 蝉の声がうるさく耳に響く。窓を開けているから、より一層うるさい。だけど窓を閉めてしまうと暑いから、閉めることもできない。 あーもう、万事屋来るのやめようかなあ。暑すぎて仕方ない。今度は秋ぐらいに来れば丁度いい気がする。 そんなことを思っていると、銀ちゃんが口を開いた。 「まあ、暑ィのは嫌いだけど、夏は別に嫌いじゃねーんだよな」 「…へ?」 銀ちゃんがらしくもない事を言うものだから、私は少し驚いた。夏が嫌いじゃないと?へえ、意外。 「そうなんだ、銀ちゃんって夏好きなんだね」 「あ、えー、好きって言うかだな…」 銀ちゃんはソファに寝転がりながら、窓の外を眺める。 「まあ、そーだな」 ――――突然のことだった。銀ちゃんが、倒れた。 なんで?なんで銀ちゃんが?昨日まではあんなに元気だった銀ちゃんが、なんで? 私は泣きそうになりながら、銀ちゃんの病室へ駆け込んだ。すると銀ちゃんはこちらを向いて微笑んで、 「俺、もう長くねーみたいだわ」 平然と、そう言った。 銀ちゃんは、あの日。死ぬ直前に私に言った。 「、万事屋のこと、頼む…」 銀ちゃんの手が、そっと私の頬に触れる。その手はとても、とても冷たかったのを今でも覚えている。私は銀ちゃんの手の上から、自分の手を重ねる。ああ、冷たい、なんでこんなにつめたいの、 「なあ、、お前って、まだ夏が嫌いか?」 「…え?」 「いや、前にお前が嫌いだって聞いたからさ…」 どうして今、そんなことを聞くの。今はそんなこと言ってる場合じゃない、今はもっと、 「確かに蝉とかうるせーし、打ち上げ花火の音とかも耳障りだし、とんでもなく暑ィし、なんかもう全部がうぜーけどさ。 でも、嫌いなわけじゃないんだよな」 「なんで今そんなこと言うの?」 私の目からは、涙が溢れ出す。その涙は、銀ちゃんと私の手を濡らした。 「夏、好きなんだよ。意外と」 「銀、ちゃん…?」 「なあ、、俺さ。 お前には、一番夏が似合ってると思う。 この世界で、一番。」 銀ちゃんの手が、私の頬から滑り落ちる。 なんで、最後の言葉がそれなの。もっと違うことを言って欲しかった。俺はお前が好きだった、とか、そういうの。 なんで、お前には夏が似合ってる、なんて言うの?私は夏が、大嫌いなのに。 大嫌い、なのに……。 蝉の声が、聞こえる。また、今年も夏がやって来た。 夏が来るたび、銀ちゃんを思い出す。そして、銀ちゃんの最後の言葉を。 ――――なあ、、俺さ。 お前には、一番夏が似合ってると思う。 この世界で、一番。 ……夏なんか嫌いだ。大嫌いだ。 どの季節よりも多く、銀ちゃんの欠片が落ちているから。 君には夏が、誰より似合う ( 俺は、打ち上げ花火を見て笑うを、 道に咲いている向日葵を見て微笑むを、綺麗だと思った。 には、 世界で一番、夏が似合うと。 ) ほんとは、嫌いじゃない。銀ちゃんの好きなものを、私が嫌うわけないんだ。 ------------------------------------------ そら様リクです。泣けるシリアス+死ネタ両方を兼ね備えた感じを目指したつもりです。(全然目指せてない なんか微妙でごめんなさい>< リクエスト有難う御座いました! |